




今までは毎週のように東京と伊豆を往き来していたので、暇なときに青山の美容院に寄って髪をカットしていましたが、近頃では用事があるときだけ上京するようになって、わざわざ青山まで出かけるのも面倒になってきました。うちの近くに美容院があればいいのですが、初めての店に入るのは何の店でもちょっと勇気がいるもの。特に美容院はしばらくの間身を預けてしまうので、気に入らなくても途中で逃げ出すわけにもいかないので不安なものです。
主人がいつも行くうちの近くの花のきれいな床屋さんに行こうかしらというと「男の髪は丁寧だけど、女の髪はできるかどうかわからないよ」といいます。私の髪は女らしく結い上げるわけでもなく、カットをするだけで簡単なのですが、本当はカットだけで形を整えるのは一番技術を要するのかもしれません。
やっぱりその近所の床屋さんに行ってみることにしました。その床屋さんは入り口に上がるまでのちょっとした階段にも、テラスの手すりにも季節の花をいっぱいに飾った外観はとてもきれいな店です。主人がいつも「花がきれいだよ」と絶賛しているその店に入ると、枯れた葉や花柄がひとつも付いていない、生き生きとした美しい蘭がさりげなく置かれたきれいな店でした。室内にただ花を飾るのではなく、愛情をこめて育てているのが伝わってくるのです。
明るい外の花が見える窓辺に座ると、私の担当は息子のお嫁さんでした。花の好きな床屋さん夫婦に美容師になった息子が美容師のお嫁さんを連れて帰ってきたのです。親の仕事を継がない子が多い中、技術を待った親子四人がきれいな花の中で仕事をしているのはほほえましいものでした。
都会の美容院にはない心地よい満足感で、花いっぱいの階段を下りてきたのです。 |
 |
|